(エンディング) これでいいのだ
去年は BOSE-802の2スタックをフロントにして3台のアナログパワーAMPという機材で、このブログ読者の手をお借りしながら全演奏をまかなった。
しかしセッティング時間は半端でなく、炎天下グッタリ疲れ果てたころちょうどリハの開始という殺人的スケジュール、それに野外で中・大規模カバーできるPAシステムではない。
何事も起きなかったのが奇跡としか言いようがない。
(昨年の同イベントの写真)
今年もまた主催者からの依頼がありましたが機材的に対応できない旨を説明、お断りして一見落着かに見えた。
ところが数週間後、再度話が戻ってきた、ビッグバンド相手の調整事項やビッグバンドを得意ジャンルとする業者が予算範囲では皆無だとのこと。
そこで、機材とその仕込み、ステージの転換時の対応を専門業者に委ね、ステージの構成とオペレーション(ミキシング)は私、Shinが行う事でイベントの実現が再度見えてきた。
【PA(SR)手法は音楽ジャンルによって激変する】
◎ビッグバンドの心は「アンサンブルの美しさ」にこそある。
もちろんビッグバンドの音響に触れるチャンスは極めて少ないとおもわれますが、マト外れな音作りはバンドにも観客にも迷惑となり、それが引き金となって「ビッグバンドPA不要論」が沸き起こる。
しかし上から3番目の写真を見てほしい、写っている部分の2倍位の人で広場がうめ尽くされた状況で「生音」などせいぜい前にいる100人程度にしか届きません。
しかし出音が「電気音」っぽくなる事は極端に嫌われる世界。
それは「電気音響ナシ」で100%仕上がっている音楽だから当然です。
だから最良質なPA(SR)が不可欠なのです。
したがって演奏+楽器配置とマイキングの妙味が強く求められるわけです。
ビッグバンドJAZZでは他ジャンル音楽のそれとはあきらかに異なります。
オンマイクにすればするほどPA音のまとまりが得にくく、ミキシングの難しさの反面、良い結果も出しにくくなります。
17の楽器から放つ演奏音にマイクをあて、演奏者も観客も満足できるSR(サウンド・レ・インフォースメント)を行うには余程の覚悟が必要になります。
(今回の基本配置図)
(転換配置図)
転換配置図は「基本配置図」に対し、ステージの転換に際し変更する部分を明確に、タイムスケジュール、演奏バンド名、機材の移動・切り替え情報、それに対応するch-Noを入れ、スムースな転換を支援する。
【ビッグバンドPA(SR)の要点】
「俯瞰」 で聴いて良ければイイPA(SR)だ。
(ホーンセクション)
人間関係・セクションの人の和・信頼関係がそのまま音になる。
また配置にはセオリーがある。
TP(トランペット)の指向性を考えよう
おいしい音は60度まで広がっている、あえてマイクを減らしてややオフ気味にすることによってTP2・1及び3・4が電気音っぽくさせずに総合的に納得の音にした。
(TPは今年、所属の日本音響家協会の公開実験データあり)
TPのPA用、録音用の最良点を徹底的に探った(意外な結果が出ている)
TB(トロンボーン)はとかく薄くなりがちなのでレベルに注意してTP同様に楽器4本に2本のマイクで良く意識してカバーした。
SAX(5本が基本)ではベル至近距離(オン)で集音し、とくにSAXパート
のソリ=ソロの複数形(合奏)、そして金管とのまとまりの美しさを表現するのはミキサーの腕・耳に負う部分が大きい。
クラリネット持ち替えの場合、ベル(筒先)をマイクにあてようとする奏者は案外多いですね。
「長さ方向の真ん中あたりがイイ音しますよ」と促すことを忘れない。
(クラリネットは「閉管楽器」、昨年、TP同様に日本音響家協会の公開実験、ベストポイント探査データあり)・・・下写真
cl のPA用、録音用の最良点を徹底的に探った。(これも意外な結果が出ている)
歴然たるこの違いはすぐ演奏者本人が分かる、ソロでもこの美味しさに演奏者は確実にハマっていたようだ。
スタンドはブームよりグースネックが適する。
ホーンセクションのソロ
合奏側でソロ優先の演奏を心がける。
ソロの演奏位置はSAXの前、ホーンセクションから離れた「センター」では「掛け合い」もやりにくく演奏は成り立ちにくい。
(リズムセクション)
ピアノ(電子ピアノを例にします)
ラインどりとマイク集音がありますが、「カブリ」を防ぐ意味ではラインです。
問題は「どんな音量でフロントから出すか」。
・合奏の中では「聴こえるか聴こえないかの音量、たまにはっきり聴こえるフレーズがある程度が適切です。
フィーチャーやソロでは確実に浮き立たせ、主役に持ち上げる、それがミキサー(オペレーター)の役目です。
ギター
得てしてラインよりAMPにマイクをあてた音の方がイイ演奏になる場合が多い。
ラインのみだとフレット間を移動する指の「キュッ」キュッ」が気になる事がある
のでマイクとラインをミックスすると良い結果を得られる。
この楽器もピアノ同様に合奏の中に沈めることでは同じ運命にあるが、フィーチャーやソロはカッコ良く決めてあげます。
ベース(ウッド・ベース、エレキ・ベース、アップライト・ベース)
いずれもベースAMPを用い演奏するがベースAMPが小さい場合はマイクどりは適さない、これもギター同様に集音する。
※気をつけなくてはいけないのは:過度にPAで出す必要はなく、出し過ぎると必ず演奏者からクレームが付く。
80HZ以下はストンと落とす。卓で100HZで切っても良い、ここはビッグバンドJAZZのベースでは一歩も譲れない重要ポイントであります。
ドラムス
バンド全体の基準音量はここで決めていることに注意をはかる。
TOP2本のマイク(野外では57などダイナミック型)でほぼまかなえる。
C451は野外では避けたい。(湿度によるトラブルが予想される為)
バスドラム(Kick)は演奏の中で軽く「トントン」と聴こえる程度、それ以上は「やり過ぎ」、ベースの場合と同じです。
セッティングは「穴に突っ込む」などは論外、ビーター・ポイントから外し、皮の鳴りをややオフ(10cm位話して)集音、卓側はPAD-ON
配置はバスドラムの打点位置がTBと横並びになるところに合わせる。
パーカッション
通常、さほどマイクを意識する必要はないがソロなどがあれば2台のコンガの間に57など1本あて、PADを入れる。
特に「ギロ」「クラベス」「マラカス」には絶対にマイクはあてない。
ドラムTOPのマイクでカバーできるようドラムに近づいて演奏されるから聴こえていれば良い。
(ボーカル)
JAZZボーカルは他のすべての「ボーカル」と決定的に扱いが異なります。
・「リバーブ」を入れることはご法度、入れたら「シロウト!」と言われるだけ。
ボーカルが入る曲ではバンドの演奏音を普通下げるが、そうなっていない場合、ミキサーがフォローしてあげる。
①ユニティレベルの範囲でマスターレベルを3dB位下げる
②ユニティレベルの範囲でVo音量を3dB位上げる
③曲の進行を追い、Voのない部分では確実にバンド側を戻す。
※ ボーカルを意識した演奏慣れしたバンドではこの操作は不要。
(風対策)
野外ライブでは昼間、リハでは問題なく、夜の本番で「吹かれまくり」というのはザラにあります、そうならないように「吹かれ防止」は最初から手を打っておきます。
「 譜面が飛ばされる!・・・・」はバンドさんにお任せしてマイクのウィンドスクリーンを忘れずに。
57には全部スポンジのウィンドスクリーンが必要になります。
他のマイクも同様です。
よほど強い風でない限り58は問題なし。
以上
(おしらせ)
fet V、fetⅡ、fetⅡi、fet3など、ご注文により人気機種の製作を承っておりますのでお問い合わせください (オリジナル・パーツで製作)
ものづくりニッポンもっと元気出せ!
【おことわり】
★ここで公開している回路・写真・説明文などは音響家の方、アマチュアの方でハンドメイドまたは試験評価なさる場合の参考として考えております。
★製作物・加工物の性能・機能・安全性などはあくまでも製作される方の責任に帰し、当方(Shin)ではその一切を負いかねます。
★第三者に対する販売等の営利目的としてこのサイトの記事を窃用する事は堅くお断り致します。
★情報はどんどん発信していきます。ご覧いただき、アレンジも良し、パクリも結構です、Shinさん独特のこだわりと非常識を以て音響の世界を刺激してまいります。
管理人(Shin)
ShinさんのPA工作室
ご意見やご質問はこちらから宜しくお願いいたします
メールはこちらから sound_ai@xk9.so-net.ne.jp