話は2009年までさかのぼります。
当時WM-61Aを使った録音をおこなっていたころ「パナ改」を知りました。
見よう見まねで「Linkwitz」氏の2~3種類の回路を試しました。
プラス接地という違和感は強いがECMらしからぬクセのない自然さと器(うつわ)の大きさに魅了され、外部電池を入れたBOXを作り使い始めました。
2009年9月、ライブハウスでのJAZZ録音、混み合ってきて機材を載せているテーブルを半分譲らねばならず、イヤな予感。
通し録音中だが録音機材と件(くだん)の外付けBOXとケーブル類をそっとわずか移動させた。
その瞬間モニターヘッドホンより「ガリッ」とノイズを発生したかと思ったら今度は無音。
あわててミニプラグを少し回してやると音は戻ったがしばらくするとまた無音に・・・結果はメチャクチャの涙。
これこそがミニプラグにDCを印加した「パナ改マイク」の最大欠点であることがあとで判明した、それは考えてみれば当然のことなのです。
この事が「世界の・・・」といわれる「Linkwitz方式パナ改」 との決別の決定的なきっかけになりました。
Linkwits-Mod はソースフォロワ改造の基本は優れているものの「安定性」「伝送」「汎用性」 に関してはこれでは通用しない、つまり業務用マイクになり得る要素がまったくないことに大いに失望した。
このとき心に決めました、
「もう決して音響にミニ・プラグ、ジャックは使わない!」 そして 「ここから先は自分の手でやる」の2つの決意です。
ミニプラグの欠陥性については2010年にこれをまとめた記事があります。
https://ameblo.jp/shin-aiai/entry-10733817436.html
あの優れた音の「パナ改マイク=Linkwits-Mod」を電池箱と不適切なミニプラグ・ジャックいらずで安定化し、普通のマイクにするんだ!、マイナス接地で。
それには何がなんでもXLRコネクタの中に回路部をおさめてファンタム電源で動かすんだ、他に例があろうとなかろうと関係はない。
実現できるかできないか、なんかじゃない、「絶対に実現させるんだ」 と何かにとりつかれたように実験と試作を始めた。
そういう時って、まず「出来る!」と思わなかったら絶対にできないでしょ、「出来る」を求めて純粋にどんどん進むから当然できる。
そしてはじめてカタチになったのがこれ。(2009年11月6日)
https://ameblo.jp/shin-aiai/entry-10382343115.html
はじめてカタチになった「ファンタム式パナ改マイク」がこれです。
ジャンク部品の寄せ集めみたいな笑いたくなるほど不細工ですがすべてがここから始まりました。
なかなかXLRコネクタにはおさまらない、2個連結で何とか・・・
しかし金属同士が連結していないと誘導ノイズが出るので往生した。
はじめての「ファンタム式パナ改マイク」
(当初の回路図)
バイポーラTR式です。構成・考え方は現在となにも変わりません(アリャ?逆相だったんですね ^^; )。
それでも 邪魔な外付けBOXや宿敵の「ミニプラグ・ジャック」からも開放され、これでもビックリするほど「小型」になった、そして同じ音だがとりわけレベルがデカイ、感激は言葉では表せません。
なんと、ラインレベルで出力されるマイクになっていたのだ。
ここからは小型化に向けて回路変更、ミニ部品の採用などを進めたが結局すし詰めにすること位しか・・・
なすすべがなかった。
そして現場からは「やはりマイクレベルじゃないとビックリしちゃうヨ」、とクレームが。
じゃあ決まった、FETだ!。
10μFなど必要なく小さい容量のコンデンサで間に合うし、「ミニサイズのFETならもっと小さくできる!」
しかしFET差動AMPで平衡出力、おまけにファンタム動作回路など例がないのでECM電源まで供給できるシンプルなFET回路をでっち上げた。
回路電流1mA、最大音圧111dB/A スペック的にはやや不満はあるもののこの点は「従来のパナ改同等」。
ここはスタート点だ。
初のFET式「ファンタム式パナ改マイク」 fetⅠの試作品(2010年2月)
夢にまでみたこのスタイルが実現しました。
当初のFET式はAVX社の0.22μF使用、「中域の張りが強い」というご指摘だがこの時点で超高級国産マイクに一歩抜き出ていた。
そのうえでのの評価だ。
そしてコンデンサの選択実験では行き着くところはやはりWIMAだった。
WIMA MKS-2及びMKS-4、両者の音質差は自分にはわからないので無条件でカタチの小さい方にした。
当初のfetⅡの回路図
気を使った回路です、ケイタイからの不要電波の影響をカットするコンデンサや電流制限らしき抵抗など。
これはのちにさっぱりと省略した。
出力インピーダンスがやや高いが現実的な伝送には問題ない。
(大音圧 130dB/A THD:0.4%~1%をATTなしでクリアーした)
驚いたのは130dB/A 1KHZ THD 0.4~1% をクリアーさせたときだ、およそマンションの一室でやる作業ではないですね。
建物の遮音(D値)50dBだとしても「ピー」という1KHZの音が外部に80dB漏れるわけです。
ケイサツに通報されないよう5秒程度で騒音計と歪率の指示値を写真に収めたら信号を切ってシカとする。
これはWM-61Aのドレイン出力での測定では100dBを超えた辺りから怪しくなり、107dB程度でヘタレていたのを考えると完全にソースフォロワの勝利、圧倒的としたいいようがない。
あれから8年、おかげさまで回路も外観も洗練でき、そしてなによりも実績と機会をいただいて「音のいい手づくりマイク」として有名になりました。
現在の fetⅡ
(ここがキモ)
名カプセルWM61Aあってこその「ファンタム式パナ改」です。
https://ameblo.jp/shin-aiai/entry-12009432562.html
これで、なぜ「パナ改」=「WM61のソースフォロワ」なのか、なぜファンタム式なのか、進化の仮定なども含めておわかりいただけたかと思います。
以上
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