Brüel & Kjærのシステムによる無響室測定データはマイクロホンの物理的特性の一部を表すあくまでも参考データであることを決して忘れてはなりません。
マイクロホンの能力は無響室でサイン波をスイープさせて拾った結果で得られるデータではわかりません。
この物理データをもってマイクの特性を決定付けるのはきわめて危険なことを私達は経験してきました。
それはかつて国産マイクメーカーすべてが陥った誤り、凋落への「いつか来た道」。
【1】
日本のマイクロホンの進化発展を決定的に阻害していたのはコレだ。
※実用マイクロホンハンドブック(CQ出版 1967年)
※マイクロホンハンドブック 第2版(日本放送協会 1973年)
※オーディオデータマニュアル(オーム社 1987年) 以上より抜粋
その後、BTS規格は1991年に廃止され、JIS-C5502(マイクロホン)の規定からはいつのまにかこのテンプレートが消え去り、かつてこのバカげた規定があったことすら今現在Web上で探すことは私にはできないほど隠れ去った。
等級により価格は大きく異なり当時BTSスケールから惜しくも外れた製品はJISスケールで救済する構図が成り立っていた。
「音質」をこんな型枠で規定して一喜一憂していた日本メーカーやBTS(放送技術規格)の方向性は海外から大笑い。
しかし折からの「国産品愛用」という数年間にわたる半鎖国的な国策キャンペーンが発展途上である国産マイクを甘やかしてダメにした。
結果、音楽と向き合うマイクロホンから音楽が抜け落ちたまま哲学・美学という文化面の裏付けは西欧から遠くおよばない遅れをとり、決して追いつくことがない。
さらに有力メーカーの撤退・廃業が追い打ちをかけていった。
BTS規格によればアナウンス用マイクはBTS-1級である必要があったが、たとえばSM58はこの特性から「BTS-3級」or「JIS3種」を余儀なくされた、「あまり音の良くないマイク」に分類されたいわゆる安物・低品位マイクとされてしまう。
そんな矛盾からNHKでは海外マイクにはBTS等級をつけない処置がとられた。
海外(欧米)では・・・この言い方も古いが、マイクロホンはその国の文化、言語と音楽に浸り、晒され、試され、じっくりチューニングの完成した優秀な製品が続々生み出された。
日本では正弦波、ホワイトノイズ、果ては「明珍火箸(みんちんひばし)」を叩いた音で最終チェックをやっている」と自慢する名門老舗マイクメーカー(S)、あきれているうち案の定凋落・自然消滅の道を転げ落ちている。
ちょっと待て!、今まで何を作って売っていたのだ、欧米から何を学んできだのだ。
音を聴くことをやめてはいけない
自分の声が綺麗に出せるマイクロホンはどんな音に向き合っても綺麗な結果を出します。
【2】
優れたマイクロホンと出会うため
「マイボイス・リアルタイムモニター」のススメ
男声を条件に、マイクロホンの素性を一発で判断する方法があります。
ヘッドホンによる「自分の声のリアルタイムモニター」です。
これはShinがこれまでおこなってきたマイク開発や改造チューニングなどマイクロホン評価のすべてに用いてきた実績のある手法ですので是非ご紹介したい。
自分の声は自分がいちばん知らない」と一般には言われています。
それは自分自身が聴く自分の声は頭蓋・骨格・胸骨・腹胸などを通して自身が感じているからです。
一方他人に聴かれている声は伝達経路が自身とは異なります。
しかし本当に細部までわかり得るのは「マイボイス・リアルタイムモニター」がダントツの判断能力を備えていることを私の経験から申し上げておきます。
・ヘッドホンをつけた瞬間におおかたの周波数応答性が見えます。
・「マイボイス」の発声は「It's fine today」および「It's fine today Test!」を可能な限りネイティブに発声します。(それをスペアナで監視すると数10HZ~15kHZ程度まで分布しており、一般的な教科書とは異なり、人の声はきわめて広帯域な音源であることがわかります。
(ジャパニーズ英語発音ではまったく役にたちません)
(日本語親和性について)
母音言語である日本語表現力は私の場合「FM東京」の看板番組であった城達也による「ジェットストリーム」の一節を読み上げるテストをこれに加え、マイクロホンの「日本語親和性」として大切なファクターにしております。
https://www.youtube.com/watch?v=xWYjaKBuzXI (テスト例)
(このテストで判断できること)手持ち・スタンドそれぞれで。
・ピークやディップなども違和感として感ずることができます。
・一世風靡したAMAZON激安マイクの本質的な良さはこうして発見しました。
・マイクを2本使わなくても「逆相」マイクは一瞬で判別できます。
・100dB/A程度までの高音圧テストは簡単にできます。
・マイクのA/B比較によって対象となるマイクのモデリングが詳細にできます。
・ヘッドホン音量は大きめである必要があります。
・指向性テスト、近接効果の出方、タッチノイズ・ハンドリングノイズ、吹かれは一発で実用の可否がわかり、振動試験やG試験、風洞試験の無意味さよ。
・総じてマイクロホン性能のほぼ全容が判断できます。
・音楽ジャンル適正・録音適正、PA適正、楽器適正といったところまで現在までに把握できるようになっています。
(必要な条件)
1.音質判断を的確に行うためにダイナミック型、コンデンサ型、リボン型それぞれ代表的なリファレンスマイクの用意が必要です。
2.PCと音響解析アプリ(visual analyzer、WaveSpectraなど無償アプリで十分)
3.ヘッドホン(私はSONY MDR CD900STを代々使用)、これはリファレンスになる道具ですので自分の好みで選ぶべきではありません。
モニターヘッドホンのリファレンス、SONY MDR-CD900ST
(考察)
邪道なのか理にかなっているのかは私にはなんとも言えません。
ボイスは「言魂・言霊(コトダマ)」が宿るのか・・・・・
これまで数々のマイク鳴き合わせで自信を持って激安マイク(改)を参加させたり無鉄砲なこともあらかじめ結果がわかるほどです。
ダイナミックマイクのモデリング・チューニング、自作リボンマイクのBベロ モデリング、過去には「ファンタム式パナ改マイク」の設計などすべてこの方法によって音作りしておりますのでかなり高度な音声判断が可能なワザであることには間違いないといえます。
【結論】
マイクロホンは楽器である
以上
(お知らせ)
fetⅡ、fetⅡi、fet3など、ご注文により人気機種の製作を承っておりますのでお問い合わせください (オリジナル・パーツで製作)
(Shinの「ファンタム式パナ改マイク」は従来通りPanasonic WM-61A使用です)
モノ作り日本もっと元気出せ!
【おことわり】
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★製作物・加工物の性能・機能・安全性などはあくまでも製作される方の責任に帰し、当方(Shin)ではその一切を負いかねます。
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