定番 AKG C-451Bには大きな秘密が隠されていた
AKG-451BがC-451E/EBのリリーフ版としてこの世に現れ、ふたたび「定番マイク」となって久しい。
今回の記事はどうぞ「思い込み」を排して事実を受けとめてください。
1969年に登場したC-451(E・C)は音響技術者の熱い支持を受け、その後類似した別機種を生み出しながら機種をまたぐ変遷を行い推移してきた。
1993年、C-391Bの登場で製造中止となった以降も「シゴイチ人気」は衰えることなく高値で取引されてきた。
2001年、復刻版として突如現れたのが「C-451B」である。
突然の復刻版として登場したC-451BはC-451E(EB)のギラギラした高域端の表情とはやや異なるものの現場にはほどなく受け入れられ再び「定番化」した。
今回のテストはC-451Bの秘密を探るため行なった。
C-451Bの回路図を探しているうちに妙なことに気づきました。
同シリーズのC-451E(B)、C-391B、C480Bなどは探せば適度に見つかりますが、C-451Bの中身、特に回路図についてはかん口令が敷かれたようにまるで見つからない。
回路図では成極電圧を与えているかどうか見たいだけ、つまりECMなのかDCバイアス式なのか二者択一の判断情報のみで十分だからです。
またC-451Bは使用カプセルの情報がまったく存在しない、あまりにも情報がない為、中には「CK-1が一体型としてマウントされている」と断定した誤った情報を発しているサイトまである。
メーカーにはなぜそこまでして守るべき秘密があるのだろう、不自然だ。
C-451Bには「何かがある」
筆者にはこのマイクはDPA社各機種同様にECM(エレクトレットコンデンサマイクではないか、という疑問があり 荒技をもってその事実を確認した。
(供試マイクロホン)
上からECM: BEHRINGER C-2、
AKG C-451B、 C-480B(CK-61)、C-391B(CK-91)(カッコ内は使用カプセル)
+ECM:NEEWER NW-410
[関連資料]
(C-451E・C データシート)
C-451E(C)のデータです
(C-451B周波数特性)
低域減衰カーブおよび高域特性は「CK-1S」とそっくりです。
C-451E(EB)用、高域プレゼンスカプセル、CK-1Sのデータ
(C-480B ULS回路図)
典型的なDCバイアス型トランスレスOUTのコンデンサマイクです。
(C-391B データシートより)
C-391はDPAのすべてのマイク同様方法でECMであることを呼び変え公表しています。
[検証]
C-451Bの秘密はかくして判明した
方法:ECMの小型棒状マイクであり、FET外付け・カプセル分離のできるBEHRINGER C-2およびNEEWER NW-410のプリアンプ部を使いC-451Bのカプセルを動作させた。
1.C-451B 4本の小ネジを外すとカプセルとAMP部が分離された。
スプリングの中にアルミホイルを丸めて投入すれば2つのECMにあてるだけで接続できる。
2-1.BEHRINGER C-2 のカプセルとプリAMP部を分離した。
2-2.NEEWER NW-410のカプセルとプリAMP部を分離した。
3-1.C-2のAMP部にC-451Bのカプセルを仮付けしての音声テスト
驚くことになんの問題もなく音声は出た。
出力レベル音質も問題なし。
3-2.同様にNW-410のプリアンプにてもテストを実施、結果は同一。
典型的ECMであるBEHRINGER C-2およびNEEWER NW-410のプリアンプでC-451Bのカプセルが動作したということは何を意味するか?
答えは単純である。
[結論]
・ AKG C-451BはECM(エレクトレットコンデンサマイクであった。
100歩譲ってもこれは成極電圧のいらない方式のマイクロホン、すなわち「ECM」である。
・ C-391Bの「CK-91」は「呼び変えECM」であることをメーカーが公表しているので、一応動作確認した、当然BEHRINGER C-2およびNW-410のプリアンプで正常動作が確認された。呼び変え形式は間違いなく「ECM」であることも併せて実証した。
・ C-480Bの「CK-61」では同一条件で音は出るもののレベルが20dBくらい低く、SN比も不十分である。これは別プロセスの現象と理解した。
C-480B ULSの回路図には成極電源回路があり+62Vを生成している。
したがってDCバイアス型である。
ECMに対する思い違いについて
「ECM」というと安物・100円マイクという定説に誰もが侵されている。
ここでのECMは市販の軽いカプセルを筐体内に実装した形式ではない。
外筐の一部を構成するカプセルであり大きな「質量」「重量」を持つ点が市販ECMと大きく異なる。
質量・重量および筐体との完全一体化を図れば「運動支点」が強化される(メカニカルアース動作)、市販ECMでも見違えるほどよい結果を得られるがこのことは見過ごされていることも多い。
DCバイアス型コンデンサマイクと同一サイズ・構造にすることによってその良さを引き継ぎながら高音圧を許容するマイクとなる。
異なるのは成極電圧としてバックプレートに高圧帯電させたであろうと推察するくらいだと思います。
この形式のECMの利点はダイアフラム(振動版)とバックプレートとの距離を離すことができるため、高音圧まで直線的に信号が取り出せる、という最大メリットがある。
このため、帯電電圧はDCバイアス型の数10~150Vをはるかに超える1KV程度まで上げ出力レベルとのバランスをとれば、高耐音圧の優れたコンデンサマイクとなる。
これがDCバイアス型コンデンサマイクにはないECMの決定的な長所であります。
「ガセだ」、「意図的だ」、「それでもDCバイアスなのだ!」「メーカーに聞けばわかる」とした場合「ECMではありません、Self polansed方式です」ということになるかも、それがエレクトレット型(ECM)の呼び変えです。いずれにしてもカプセル交換テストすればすべてわかる事です。
分解で「ネジをなくした」「バラしたら元にもどらなくなった」「音が出なくなった」など全部自己責任ですのでご注意ください。
超精密作業の苦手なかたは絶対に手をださないようお願いいたします。
もうもうやめませんか
ECMを安物扱いすることを。
以上
おしらせ
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