知り合いの音響家の先輩から戴いた往年の名機 「RCA 77DX」の蘇生・復元記録です。
蘇生・復元を終えたRCA-77DXの勇姿
さすがに70年近い歳月を経たお宝は想像以上に疲れ果てた姿でした。
ヒビの入ったケーブルはかなり硬いが何とかこの状態で音出しに挑んだ。
出た! 「とにかく出てくれればなんとかなる」と思った。音は中域しか出ていないので磁極当たりであろう、軽傷だ。
案の定リボンはかなりノビて、やはり一部が磁極に触れているようだ。
リボンは1.8ミクロン、幅1.5mm、長さ20mm、リボン~磁極間のギャップは0.1mmにも満たない精密さ。
〈1ミクロン=1,000分の1mm、1.8ミクロンとは1,000分の1.8mm、正月の金箔入り清酒の金箔とほとんど同じだと思ってください)
(リボン調整)
★作業にはマイナスドライバーが用いられますが、強力なマグネットに強く引かれたままリボンの真隣で使用しているの危険さを感じながらでないと簡単にリボンを突き破ります。
①コルゲーションの適正さを見る
②リボンの張りテンションが最重要課題。(張りすぎはナローレンジに、テンション不足は高域のないダラシナイ低音マイクになる)
③ワイドレンジかつレベルの高い一点を見つけ、適正と思われたところで仮止めし、指向性を切り替えた時音色変化の少ないのがオリジナルの良好状態、それを探り当てます。
(判断の天地を分けるプラス思考とマイナス思考)
★ リボンが長手方向、固定金具直前で切れていても「リボン切れ」と言うな!
伸びたリボンを引き寄せればなんとかなる、張れさえすればこっちのものだ。
張り替えを回避できるラッキーサインだと喜べ、あとは自分の技量のみ。
(「ダメだ、切れている、残念だけどこれで何もかも終わりだ」がマイナス思考)
(前面を下に向け背面からゆっくり息を当てれば切れたリボンは垂れ下がってくる。傷めないように竹串や爪楊枝でそっとたぐって電極に乗せればこっちのモノ、決して金物を使わないこと)
(変形修正)
出来た!!
とおもいきや、「なんだこれ、時々余韻が「ビリビリ」・・・次に「中域しか出なくなった」・・・・・リボンの磁極当たりか?
何と防塵布がリボンに触れていた。
ダルダルに垂れ下がっていたので数か所ポイント固定した。
いよいよ完成
音質は言う事なしのRCAサウンド。
【支度部屋】
1.ラッキーにもスタンドアームがある、左右のネジや金属部品はないけど。
①5mm、φ6スペーサを両側に入れた。
②M6飾りねじ(メス)に1/4インチのタップで再ねじ切り。
2.ケーブルの交換、ロクショウやヒビの入ったRCA独特の「茶色」ケーブル、
ラッキーにも「ベルデン8402」という高~いケーブルが同一色で、やや細いものの完全互換できることが分かった。
3.(訓練)・・・結果的にこれが最重要でした。
私(Shin)の場合、今回RCA77DXの蘇生・復元にあたり、自作リボンマイクを使って1.8ミクロン、ほぼ同サイズのリボン張りを失敗を繰り返しながら安定的に「切り出し」「コルゲーション加工」ほかリボンマイク作りと修理に慣れてリボンマイクに対する恐怖感を取り除くと同時に独特のクセ習得訓練を1年間程度続けてまいりました。
この間にリボンマイク各コンデションによる音の違いの習得にあたりました。
リボンマイクのユニット(モーターと呼ぶ)の中にまず慣れておかないと非常に危険な感覚的な手先と耳の精密作業である為、まず一定の訓練が必須であることを申し上げておきます。
(感想)
いかにもアメリカのリボンマイク、中域から高域にかけての張りはベイヤーとも異なり、国産Bベロなどとは対極的な音造り。
同じリボンマイクでも生産国によってこれほどまでに異なるのは、やはり言語の違いが大きな要素なのであろう。
以上
(お知らせ)
fetⅡ、fetⅡi、fet3など、ご注文により人気機種の製作を承っておりますのでお問い合わせください (オリジナル・パーツで製作)
(Shinの「ファンタム式パナ改マイク」は従来通りPanasonic WM-61A使用です)
モノ作り日本もっと元気出せ!
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どの指向性を選んでも音色変化がないのが成功の証拠です。
最重要ファクターはなんといってもリボン・テンションの適不適に尽きます。
不適の場合、双指向性では何とかOKでも単一、無指向で金切り音だったり、この部分は根気のいる見極めが大切です。
正面方向トップ近くの20度~90の位置のBassに重心を置く独特の表現はWBにはもってこいだろう、A点~B点にかけてフラットな表現、オールマイティに使えるポジション。
ところがC点まで来ると、いきなり「よそよそしい」音に変わる。
トークスタジオなどの逆さ吊りでは自然にA点にアナウンサーの口位置が来るだろう。