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Channel: ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)
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1606 :Amazonの超激安コンデンサマイクが高級機に変身する改造(第4編)

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今回の記事はかなりコアです、実施には原理・プロセスをご理解いただく必要があります。


音を磨く‐2 まだやってるの顔18 


(衝撃鳴きノイズ、手触り鳴きノイズ撲滅) 

Amazonの超激安マイク 2,380円


改造によって音質のフレッシュアップは目を見張るものがあるけど、あのタッチノイズ・衝撃ノイズはいかんともしがたい。


発生のメカニズムまでさかのぼって改善をはかるとこうなりました。


れまで「防振」「ピエゾ素子の排除」を行って一定の成果は得たものの満足点にはいまひとつ。


ぴか 着目した発生メカニズム

同種のECMカプセル、UEM-16(16φ)のダイアフラム~バックブレート電極間容量は17PF、これに準じて考えました。


そうです、FETゲート~カプセル間のリード線のストレー容量(浮遊容量)ダイアフラムおよびバックプレートの延長としてそのまま等価的「コンデンサーマイクを形成」して振動を受けていることに着目しました。


このストレー容量とは「回路図上に書かれない回路」での「C」キャパシター成分を言い、分布定数の等価回路で書き出すことが可能です。


爪楊枝など絶縁物を使ってあらためてこのマイク各部にショックを加え、最も激しいノイズを発生する部分はこの「赤」リード線、つまりFETのゲート延長上。


続いて相方の「黒」リード線、この両線間および「赤」リード線すべてのケース内部金属との間で発生していることを突き止めました。


(対策要旨)

1.FETゲート側の赤線が周囲の導体との間で発する「ショックに対する容量変化」、これを最小にする。


2.に対してはこのマイクを構成するすべての金属部分の防振が対象になる、これはリアルタイムモニターでしか探査判別の方法はないだろう。


3.金属以外の部分に対しては純然たる防振、デッドニング、機械的Qの低減が有効。


.同軸ケーブルの使用は、高周波伝送とは全く別プロセスであり、HOT側の内部導体とCOLD側外部導体との線間容量を外力でブレにくくする為のもの

で、この場合1.5D2V(50Ω/at 高周波)のスペックはそのまま該当しない。



ショック鳴きノイズ、手触り鳴きノイズ対策後のBM800基板裏面より



工事中 具体的な対策

上記1により、Hot側がCold側に対し容量変化しにくい配線材に交換する。

なおこの際、配線はECMの電極間容量(15~18PFと仮定)に対し出来る限り小さく抑えなければならない。


対策1.両線間の容量の安定した電線に「同軸ケーブル」がある。

この対策の場合、1.5D2Vを使用した。長さは短いほど良く5cm弱で収まった。

(この場合「鳴きの激しいECM取付支柱」を機械的にQダンプさせるため、この同軸配線は支柱に沿わせ、ブチルゴムテープできつく支柱と一体化させた。


◎ 1.5D2Vは50Ωの同軸ケーブルであるが、このような使い方の場合、単なる「良質なシールド線」でしかなく高周波インピーダンスとは無関係となる。


◎ 内部導体と外部導体との線間容量は1mあたり100PFであるからこの場合、5PF弱であり同軸ケーブルの構造上その値は外的振動で変化しにくいことを利用する。


◎強く鳴くバッフルに写真のようにブチルゴムテープ(自己融着テープ)を強く巻き付けてこの部分の振動をダンプ抑制した。


ECM取付支柱兼バッフルに引っ張って延ばした「ブチルゴムテープ」でほおかぶりさせ、この部分の鳴きを鎮めた。


対策2.ECMカプセル支柱と取付フレームとの間の防振は当初の対策のまま「エラストマー」によるアイソレーションとする。

(この場合、フレームへの固定ネジは可能な限りゆるい方が良い結果を得る)

ただし、ネジのゆるみを防止するためペイントロックは必須である。


(使用した「ブチルゴムテープ」=自己融着テープ)


【結果】

ショックノイズは「サイドアドレス型コンデンサマイク」の一般値同等まで抑え込み、特定周波数の鳴きはほぼ終息した。


                        以上



ペン あとがき

 世の中にマイクロホン多しといえども次元の低い素性不明のゲテモノ・マイクロホンが業務用高品位マイクと同じ土俵で出会って語られることはあり得ないはずなのだが・・・


 今回のようなだれもが見向きもしない超激安マイクが簡単な改造で次元を超える高性能を見せ、業務用マイク同等またはそれを脅かしかねないパフォーマンスを見せるのはこれが最初で最後の例だと思います。

 

 だれしもマユツバで、ヤブにらみながら気になるヤツとして接していた堂々たる安物・駄物はかくして世界レベルのマイクと対等に勝負出来る優秀なマイクに豹変した。


 すなわち元々高品位なマイクロホンに生まれるはずが、設計不良で出来そこなったまま最終商品として世に出たもの、またはあきらかな「2千円マイクとしてこしらえた製品だが解剖してみたら「エッツ」という見立てです。


いずれにせよ、激安であるこういった「名機予備軍」は熱烈歓迎である。


 こんなめったにない機会に出会えた事に深く感謝してさらにマイクロホン研究を進めて行きたいと思います。 (Shin)


(お知らせ)
fetⅡ、fetⅡi、fet3など、ご注文により人気機種の製作を承っておりますのでお問い合わせください (オリジナル・パーツで製作)  
(Shinの「ファンタム式パナ改マイク」は従来通りPanasonic WM-61A使用です)


モノ作り日本もっと元気出せ   



【おことわり】

★ここで公開している回路・写真・説明文などは音響家の方、アマチュアの方でハンドメイドまたは試験評価なさる場合の参考として考えております。


★製作物・加工物の性能・機能・安全性などはあくまでも製作される方の責任に帰し、当方(Shin)ではその一切を負いかねます。


★第三者に対する販売等の営利目的としてこのサイトの記事を窃用する事は堅くお断り致します。

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ShinさんのPA工作室 管理人  Shin-2

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