「ファンタム式パナ改マイク」 Shinの設計思想
いままで述べたことはないが、皆様にこれだけは是非お伝えしたい。
◎ファンタム式パナ改マイクの高音質はWM-61Aという世界でも類を見ない名カプセルのおかげ、そしてこの回路とハウジング形状からその良さを極限まで引き出しています。
fetⅡ 発表時の回路図
「ファンタム式パナ改マイクfetⅡ」3年半前の回路、現在でも基本変わりません。
※民生用途を拒絶した事こそがこのマイクが生き生きと浸透している源泉です。
【特徴 1】 Linkwits-Modである
Linkwits氏提唱
によるLinkwits-Mod=「パナ改」と呼ばれる回路(WM-61のソースフォロワ改造)してECMカプセルを動作させるとノーマル接続と比較して10dB以上の高音圧を許容し、ひずみ率の低減をはじめ総合的に高品位の音と出会えます。
(ヒント)3線式改造をすることによってマイナス接地する事ができ、あらゆる電子回路と無理なく自然な接続が可能になる、業務用マイクとしてはこれが決定的。
(3線式カプセル改造法です)
特にGND電極は幅0.2mmしかありません、リード線半田付け後、必ずエポキシ接着剤で固定、強化することをお薦めします。 (Shinは「ボンドクイック 5」
を使用しています、5分で固まり始め、1時間以内に完全硬化します。)
【特徴 2】 小さいコンデンサで済む(形状も容量も)
FET入力AMPを使用することによって「パナ改」でのカップリングコンデンサ=2.2μFのコンデンサが極端に小さくて済む。
※「ファンタム式パナ改」と「パナ改」ではこんなに違う、かなり別モノでしょ。
(ヒント) ※パナ改:10KΩ・2.2μFで低域カットオフf=7.9HZ
※ファンタム式パナ改:1MΩ・0.022μFで低域カットオフf=7.9HZと同一になります。
この値は開発時、聴感上吟味し、0.22μF=カットオフ f ・・・0.79HZを選び、現在も変わりません。
【特徴 3】 バランス出力回路・信号伝送
Linkwits-Mod=「パナ改マイク」には「伝送」という概念が存在しない。
「パナ改マイク」を業務用途としての活躍を考えたとき真っ先に必須条件とした。
何より嫌ったのは「3.5mmミニプラグ・ジャク」、この不安定な接続部品に直流9Vを重畳させ、人為的に接触不良を起こさせているのは「パナ改マイク」の決定的な技術誤りである。
したがって、「ファンタム式パナ改マイク」は「ミニプラグ機器」への対応は全機種にわたり当然、一切考えておりません。
「ファンタム式パナ改」、回路的にはFET2本による差動回路だが、回路を追いかけていくと途中で「エッ」と大変わかりにくい。
それもそのはず、この回路は入力となる卓のHAやファンタム供給回路まで含めてはじめて成り立つようになっているのだ。
出力インピーダンスがやや高めに仕上がったので、できるかぎり50m以内、最長でも100mをリミットとします。
同一デザインの長距離伝送版には「LZ-Ⅱ」 があります・・・・・500m~1,000mを許容するスーパー・コンデンサマイクだ。(fetⅡとのA/B比較で音決めした)
【特徴 4】 ファンタム電源動作である
これは「バランス伝送」と同時に回路設計したこのマイクの最重要機能。
N-ch FETの場合とJ-ch FETの場合では回路が大きく変わり、まずN-ch
で最も単純な回路で挑戦し、その動作を確実にさせた。
VGDS=50V以上かつミニサイズの小信号用FETである2SK330との出会いが課題を解決させた。
【特徴 5】 ECM電源はどこからどう供給するんだ
→方法はいくつかあるが②を採用している。
①AMP回路から拝借する
Rsに接続すればちゃんと動く、ところが問題がある。
回路部品は削減できるがECM電源として+1.6V~1.7程度である為どうしても大音圧(おおむね107dB/A以上)でひずみ率が増大し、ダイナミックレンジの確保が難しい、しかし音楽を扱わないかぎりこれでもいい、音質は変わらない。
②ファンタム電源を分圧・ブリード
出力2・3-1間を抵抗分圧して良質のDC電圧を得る。
最大音圧130dB以上をTHD1%でこなすようになる。
特にここに「デカップリングコンデンサ」を入れると音の鮮度が失われる、
300μA程度の微小電流のDC電源はこれでベストだ、つい入れたくなる気持ちはわかるがこれで完成品、異物デバイスなどで手を加えるべからず。
ファンタム式パナ改マイクのECM電源供給回路
【特徴 6】 ツェナーダイオード(雑音発生素子)の排除
ECM電源からもAMP回路からも雑音発生器そのものである「ツェナーダイオードを排除し、驚くほどの高SN比を実現した。
◎ツェナーダイオードから一旦発生したホワイトノイズはどんなことをしても絶対に消滅しないことがわかり、早い時期からその害を訴えてきた。
「多少電圧変動してもそのほうがずっとマシだ」という割り切りの勝利。
【特徴 7】 音質グレード
目指しているのは海外高級マイクと肩を並べる「ハンドクラフトマイク」だ。
発表3年半、使ったかたが口をそろえて言うのはこの事だ。
しかし最近は少し様子が変わり、これを超えるかどうかの問題になっている、
設計者として、そこまでは考えていなかったがどうやら現場ではそれが現実に起こっており、同録テイク間でドイツ老舗定番マイクをおさえ「ファンタム式パナ改マイク」が商業的にも好まれる例をだんだん経験するようになってきた。
①(Lacordeの「御縁」のジャケット ) ②
①4月に発売されたこのアルバム(Lacordeの「御縁」
)でも同様で、全曲のピアノに使われており、ブックレット巻末に「fetⅡ」と明記されています。 (Youtubeでも一部が聴けるようです)
②同時期発売のマキシシングルでも最終的にfetⅡの採用が報告されています。
【特徴 8】 形状
軸方向形状の無指向性マイクとしては常に形状と大きさにこだわります。
「音圧」とは呼ぶが「音は流体」というShinさん流基本概念がそうさせる。
空気振動なのだから「音」とは波動が「マッハ1」のスピードで障害物なく空間を飛ばねばならない、音が飛ぶ中間過程に置かれるマイクロホンは「超高速で進む流体」を阻害してはならない。
だから流線型か極細、それで音がいい・・・・当然のことだ。
(上:fet3 下:fetⅡ)この形状とサイズをよくご覧ください。
【特徴 9】 可能性
海外製定番高級マイクをピアノにセットしてご自分の演奏を録音して楽しまれている方にfetⅡ を使っていただいたことがある。
「このちっぽけなマイクがなんでこんなに音がイイんだ??何でだ?」と。
「よかったら」とお譲りすることにした、大口径定番高級マイクはその場でスタンドから外されお蔵に。
昔流の「パナ改マイク」なら「手作りでここまでいい音が出るんだから画期的でしょ」と云うものの「爆音よ出るな!」と祈りながら常に「100円マイク」のひけめを感じつつ邪魔で不安定な電池箱をお供にヨーロッパ製マイクを羨望していた。
「ファンタム式パナ改マイク」にはそれが一切ない、
国内超高級マイクとの優劣議論を伴いデビューしたこのマイク、現在では海外製超高級マイクと肩を並べるだけでなく、あっけなくそれを超える事例が現れてきたからだ。
「赤線」:海外超高級マイク 「青線:ファンタム式パナ改マイク」
(マイクロホン・クラフト・ファンの皆様へ)
「Shinとほとんど同じ基板にする方」、「さらに完璧を期す方」、「XLRコネクタに部品を空中配線する方」、「追加部品」を使って性能UPを図ろうとする方、いろいろ見せていただいております。
部品入手もままならない地域にお住まいの方でマイクの自作を楽しんでおられる方々もありますのでそのご苦労がしのばれます。
この回路はどんなに参考にされても構いません、Shinさんがぶっ飛ぶようなオリジナリティ溢れる回路での作例を期待しています。
「ファンタム式パナ改マイク」である事が第一条件です。
(たとえば・・・)
① 差動AMPの片側はCを通して接地されている、じゃこのFETはいらなくネ、とか
② どんどん簡略化してみたらWM-61Aだけになった、これどうする?とか
③ OP-AMPでこしらえたけど9Vの電池2個使うことになった、何とかファンタムで動かないか・・・とか
④ バイポーラTRで作ったらLineレベルだ、それも+4dBってなんじゃこりゃ、とか
⑤トランス使うと音が悪いとおもったけど、案外イイよ・・・とか
⑥ ファンタム電圧+48Vって真空管動かないか? 俺はチューブマイクにしたぞ、でもいつもヒーター用の6V、単三4個ぶら下げているんだけどクレージーかな・・・とか
などなどアイデアをどんどん出して「真剣に遊んで」ください、「ファンタム式パナ改マイク」、マジで絶品マイクですからまだまだ可能性があります、素晴らしいのがありましたらShinに教えてください。
素晴らしいアイデアはこのブログでご紹介する事も考えます。
(お知らせ)
fetⅡ、fetⅡi、fet3・LZ-Ⅱ・LZGなど、ご注文により人気機種の製作を承っておりますのでお問い合わせください (Shin)
モノ作り日本もっと元気出せ!
【おことわり】
★ここで公開している回路・写真・説明文などは音響家の方、アマチュアの方でハンドメイドまたは試験評価なさる場合の参考として考えております。
★製作物・加工物の性能・機能・安全性などはあくまでも製作される方の責任に帰し、当方(Shin)ではその一切を負いかねます。
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