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※管理人Shinは知財保護において個人による「特許」のようなものを好まず、「全公開」を旨とします。
Prologue
自作マイクでも「出力インピーダンス」は測定しましょう。
マイクの基本事項、これを意識しないマイク使用などあり得ないからです。そしてそれは実に簡単に測定できるようになりました。
筆者はかつて、高精度ミリバル・ひずみ率計と低周波発振機、オシロのベンチでバカでかい擦動抵抗器、操作の面倒なホイートストーンブリッジで、他愛のない事項の測定なのに大掛かりでした。
そうして「精密測定?」した結果も実質的には「オーム」台までの値で十分でした、そんなことを今回の実験中思い出しました。
いまは、それがなんと簡便な方法で済むか、ありがたいテクノロジーの進化です。
インピーダンスって
インピーダンスは抵抗値とリアクタンスの加算された値です。
インピーダンス(Z)=R+jx この虚部(jx)がリアクタンスです。
リアクタンスには「誘導性=コイル性質」XLと「容量性=コンデンサ性質」XCとがあります。リアクタンスがどちら性に転んでも概念は変わらない。
すなわち回路のインピーダンス(Z)とは「交流抵抗」と言い換えるとスッキリする、何のことはありません。
◎難しそうなことはシンプルに考えればイイのです。
測定(抵抗置換法)
現在筆者が日常的におこなっている方法は実に単純です。
マイク出力インピーダンス測定法はこのほか「1/2電力法」(3dB法)・ブリッジ法などがあります。
その前に、筆者のPC環境は音響業務者の標準である「Mac PC」に「Smart」アプリ使用ではありません、当然ペイできるはずもないので「Windows PC」に無料ソフトでまかなっているのが現在の環境です。
そして「Visual Analyzer」「Wave Spectra」「REW」「Audacity」など無料ソフトをWindowsで使用しています。
「REW」は優秀ですが、ここでは見やすい「Visuai Analyzer」64bit使用。
(測定精度)
特に今回測定したSONY C-38Bは市販品とは別モノ、「BTS CU-2-B」としてNHK大阪ラジオスタジオ(JOBK)出身。
公表インピーダンス250Ωに対し測定値:249Ωでした。
これはどんな困難な中、ここまでの精度を出したのか、驚いた。
あるいは選別品なのかもしれない。
「C-38B」「Bベロ」のNHK版の2本は当時「BTS1級」という過去を持ち、今回の簡易な測定法にもかかわらず当時のNHK技研の結果と変わらない測定精度にご注目ください。
準備したもの
「なんじゃコリャ」と思われるかもしれません。
小学生の夏休み研究未満の装備に唖然!かもしれません。
※「測定器」のようなものは、テスター程度。
しかしそれを否定されるなら、アプリによるPC上の測定など更に全部否定されることになるでしょう。
限られた道具で結果を出すのも音響技術のカナメです。
1.PC+オーディオ測定アプリ(「Visual Analyzer 64bit」使用)
2.オーディオインターフェース
3.スマホ(iphone)
4.470Ω~1KΩ及び5KΩBカーブVR(※巻線型が望ましい)
5.ワニグチクリップコード
6.測定用XLRエクステンダー
7.デジタルテスター
※ファンタム電源使用時、XLR②③間にはDC成分がわずかに現れるため、カーボン型VRではすぐに「ガリオーム」になってしまい、測定に困難をきたします。
1回、2回ならいいが、コンデンサマイクで継続使用するなら「巻線型VR」が正確かつ望ましい。
測定
1.できるだけフリー空間に被測定マイクをセットします。
2.PCは「Visual Analyzer」をセットし、スタンバイします。
(指示値、波形・スペクトルを見ながら正確に1/2の電圧ポイントを見つけるには適しています)
3.マイクロホンに1KHZ正弦波音を与えます。
(オーディオI/F経由で被試験マイクのスペクトル波形、実波形を表示、このときひずみのないこと。
スケールは2dBステップ程度、「Volt meter」窓は見やすく表示させる。(V表示、dB表示どちらでもよい)
4.エクステンダーを使いXLRコネクタ ②~③間にVRを入れるが、順序がある。
クリップコードを使い、まず③側にVR片側に接続する。
5.波高値または「Volt meter」窓、指示値がキリの良い値になるように合わせてその値を読み取る
6.もう片方のクリップコードを②にあて、画面指示又は「Volt meter」窓の指示値が電圧で1/2になる点、同じくdB値で6dB減少した値になるようのVRツマミをゆっくり回す。
電圧1/2(6dB減少)点でVRを回路から外し、その抵抗値をデジタルテスターで読み取る。
7.その値が被測定マイクの出力インピーダンスの等価値、すなわち抵抗置換された「インピーダンス値」として直読できます。
本来ならば、マイクレベルで測定すべきかもしれないが、プリアンプを介して扱いやすいレベルに増幅した値で変化を読み取っている、誘導など受けにくいので、ひずみのないリニアな領域ではこの方が正確に測定できます。
測定結果
筆者手許の、よく知られた定番20本の業務用マイクを選び、抵抗置換法にてインピーダンス測定を行いました。
うち4本はShin自作MEMS型マイクです。
「データ改ざん」「虚偽報告」などの事件が相次ぐなか、これは真の実測値です。
(条件):切替SW付のマイクは「M」またはフラット、PADは0dB、(C-480Bは-10dB基本)、C-38B及びC-414XLⅡは「単一指向性」モードにて測定しました。
ロー出し・ハイ受けの原則
日本では、ひと昔前なら「ローインピーダンス」=600Ω、「ハイインピーダンス」=50KΩのような風潮があり、真空管時代の「インピーダンスマッチング」に縛られ、それは(旧)BTS規格が業界を引導していた。
そのころでも欧米では現在と変わらない「ロー出し・ハイ受け」がセオリーとなっていた。
その「ローインピーダンス」とはRCA 77D(X)の時代でさえ30Ω、50Ω、250Ωはあたりまえであったのだ。
考察
メーカー公表スペック値との関係では測定値と大きく異なっている場合と、そうでないモノがあり、これだけ見てもメーカー・生産国との関係で面白いものが見える。
まず日本製:スペックに忠実なのは几帳面な国民性か、BTSの亡霊か。
ドイツ製(beyerdynamic、SENNHEISER)几帳面さは日本人とそっくりだ。
オーストリア製(AKG)、デンマーク製(DPA):概ねつじつまはあっているが値はあてにならない。
米国製(SHURE、Erectro-Voice、COUNTRYMAN):スペック値は看板値、目標値なのかも、COUNTRYMANの数値は間違いじゃないかと思うほどだが、これがアメリカ人の鷹揚な気質、そんな気がします。
筆者の場合、世界のお手本マイクの音が頭の中にいつもあること(悪い例も頭の中にはあります)。
良いマイク作りにはお手本マイクは常に手元に置いて、いつでも比較できる環境を私のマイク作りの基本としています。
よって音の悪いマイクは意図的に作る以外にありません。
測定法や機材、その結果に疑問を感ずる方があるかもしれません。
過去記事との測定結果に対し多少ブレているかもしれません。
それは新しい測定結果の方が、より正しいのはいうまでもありません。
ここまでの精度・再現性の高い測定法はもっと広く使われて良い思います。
以上
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