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はじめに
前記事:2316でご紹介した「マイクロトランス」搭載の超小型ラベリアマイク、Micro73A mems」=「μ73A mems」
元々はMEMSマイク本来のあり方にもう一度しなやかに沿ってみたら、この形状のラベリアマイクに行き着いたというものです。
ただし前作のケーブルのヨレヨレはいかんともしがたく1サイズ細いものにした。
小さいのはいいけれど音はどうなの?
♪ YOUTUBE ♪上で業務用定番ラベリアマイクとの鳴き合わせをおこなっていますのでご視聴ください。
改良点とネーミング
MEMSマイクの可能性発見以来、いつかは「SANKEN COS-11」のサイズで、性能はそれを超えるマイクをMEMSマイクで作りたいという夢を持っていました。
前記事:2316で一応それなりにカタチはできたが、大きな問題点がケーブルでした。IM73A135V01を動作させるには4線が必要、シールドをGNDにしても「3芯シールド線」が必要になる。
MOGAMI 2879を使用したが、非網組多芯シールド線の限界か最初からケーブルがヨレヨレの醜さ。前記事アップ直後にひきちぎって壊した、それほどイヤでした。
他社、他ルートを探すが、AWG-28未満では「MOGAMI」以外見当たらない。
使用線材はAWG-32、仕上がり径もやや細いが「MOGAMI 3019」で手を打つことにした。
ケーブルまわりおよび全長を変更した。
アクセサリーはCOS-11とコンパチブルです。
・使用ケーブルを「2879」から「3019」に変更した。
・全長を3mm長くし、COS-11と同一サイズにした。
・名称「Micro73A mems」を「μ73A mems」と変更した。
改善前の「Micro73A mems」・・・(ケーブルがヨレヨレ)
(μ73A mems 回路図)
トランスのTapは 5にすると、6の場合より出力レベルは約6dBくらい高くなりますが出力インピーダンスも上がります。
デフォルトはTap 6(OUT-Z=118Ω)としますが、これは使用目的に合わせて選べばよいと思います。
♪定番ラベリアマイクとの鳴き合わせ
♪ YOUTUBE にて確認いただけます。
これにより、MEMSマイクである「μ73A mems」(IM73A135V01使用)がこの世界でどの位置にあるか、はっきりと分かることでしょう。
(比較マイク)
1.「μ73A mems」
2.「SANKEN COS-11D」
3.「DPA 4060-OC-C-B00」
【比較使用したマイクロホン】
比較録音1.ストレートトーク20cm距離でのマイクホールド
比較録音2.「μ73A mems」襟付け収音の様子(筆者)
アナウンス原稿は天蓋アクアリウム http://hekiku.net/aqua/を利用させていただきました。
各マイクのプロフィール
「μ73A mems」
3つのマイクの中で唯一MEMSマイク使用、高品質マイクロトランス採用。
音声は世界の一級品と互角。SNの良さ、音の濃さではCOS-11を超えているのがYOUTUBE音声で良くわかります。
読者の皆様のご感想はいかがでしょうか。
音はさすがに30年の実績通りアナウンス明瞭度は素晴らしいロングラン現行機種。気になるのは今回の3種類のマイク中で唯一「サー・ノイズ」が確認されることは残念です。
クラシック録音、ミュージカル、楽器収音とあらゆるミニチュアマイクの中でワイドレンジ感も申し分なく、現在なお生産されているユニークな名機につき時代の波に押しつぶされないよう応援したい。
(COS-11をお手本に作りました)
ラベリアマイクの世界常識を変えたSANKEN「COS-11」のプロフィールは前回書きましたが、当時その製造をおこなっていた技術者(U氏)の話を10数年前、御本人から伺ったことがある。
そのハイライトは超小型カプセルに対するゴム引き2芯細シールドケーブルの手半田付けにあり、U氏とごく限られた作業者による手作業という内容、ケーブル断線など「修理」にはマイク1本の代替交換以外に方法はないとの話でした。
この「修理代」はマイク新品価格よりわずかに安い程度だったのを覚えています。
U氏はその頃すでにマイクメーカーとして独立され、優れた製品の供給を続けています(都内)
「SANKEN 」COS-11発売当時のカタログより
筆者はCOS-11Dを昨年新規購入したが「受注生産」とのこと、「納期未定」で注文した。
しばらくして「お約束できないのでキャンセルもできます」という連絡を受けた。私は期限を定めず注文を継続したところ、ほどなく入荷の連絡があり結局納期は1か月だった。
10数年前、手にしたモデルとはケーブルの材質が改善されたように見えるが現在でもこの手作業は変わっていないと推測しています。
「DPA 4060」
DPAはデンマークの名門音響測定装置メーカー「Brüel & Kjær」(B&K)から分離独立したプロフェッショナルECM(エレクトレットコンデンサマイク)専業メーカーである。
DPAは「Danish Pro Audio」の頭文字です。
4060はその超小型マイク開発チームで誕生、ブロードウェイをはじめとする世界の劇場を席巻したミニチュアマイクとしてあまりにも有名です。
この構造からは先発である「SANKEN COS-11」のはかりしれない大きな役割とノウハウの一部も見え、感じます。
同社は「ECM」を「プリ・ポラライズド」型と呼び変え、あたかも特別な方式のように見せて「ECM」と呼ばれることを極端に嫌っているのが特徴的です。
高品質、高信頼、高価格を維持するために、ECM=安物=100円マイクといった「悪風評的な定説イメージ」はどうしても避けたい、というメーカーの意志ではあるが・・・
「プリ・ポラライズド」=「あらかじめ分極された」、は「エレクトレットチャージ」を意味し、ズバリ「ECM」そのものです。
そこをわかりづらくしているため、4006や4011などはDCバイアス型だと誤解している人の方が多いのではないかと感じます。
「プリ・ポラライズド」とはいわば巧みな「偽旗作戦」にも似たイメージ戦略としてスリ替えに成功していると言わざるを得ません。
DPAはECM専業メーカーであることを忘れてはなりません。
★ためしに筆者手元にある「4006A」よりはずした無指向性ヘッド部はDCバイアスを与えることなくベリンガーや中華製激安マイクに差し替えてECMとして普通に動作します。
ご参考
あとがき
次元を超えようとするとき見せる工業製品にはいつもドラマと感動があります。
マイクロホンというヒトの五感を代替する機械は何をもって完成と決めるかは機械ではできない。それはヒトの五感と同調したとき、それをヒトが判断する以外にはありえないからです。
マイクロホンは使い方・音源・場所を選びます。
どんな使い方、どんな音源にも最適となるマイクも存在しません。
この点、写真レンズと立ち位置や価値観、選び方もそっくりです。
さいごに・・・これに使用した「マイクロトランス」の実力は見た目や従来の常識を遥かに超えた、世にもまれな「逸品」であることを断言します。
※なおこのマイク「μ73A mems」は
ご注文によりお作りします メール窓よりお問合せください。
以上
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