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マイクロホンの隠れた罠、EMC(電磁環境両立性) #1
EMC とは一定の電磁界を受けた悪環境でも正常に電子機器を動作させる技術(EMS)+電磁妨害(EMI)、その両立化保証技術を指します。
デジタル機器では電源及びI/Oから侵入する「インパルスノイズ」耐力およびESD(静電気放電)耐力を主としてきました。
近年では放射電磁界を加え、いずれも機器の正常動作を保証させることが目的です。
それが低い場合デジタル機器では「誤動作」という現象になりますが、アナログではクリック音や連続したノイズとして聴こえてしまうことがあり、その対策法はデジタルの場合と同様です。
アナログ機器の場合は、従来ならハム音を防止する商用電源周波数(50HZ/60HZ)を対象とした静電シールドおよび電磁シールドが古くから用いられて、それで十分でした。
しかし昨今の電磁環境の変化により、高周波域を対象とし、その周波数はなんと6GHZ程度まで及ぶ高度な対策が求められるように大きく変わりました。
ひと昔前ならデジタル機器だけの問題でアナログ機器、特にマイクロホンでは「ハム防止の静電シールド」程度で十分でした。
電車にサイリスタチョッパが導入されはじめた頃から電車内ではAM放送受信がノイズまみれになり、舞台上は調光ノイズがマイクに混入し、エレベーターがインバーター制御となるとハム・誘導防御では足りず数MHZまでの対策を必要とする事態となりました。
吊りマイク回線の当たりはずれ神話
ホールにより吊りマイク回線の品質は良好~劣悪まで存在するのは既知の事実です。
本来死活問題となるがそのカラクリが語られ、明かされることはまずない、たいていは多点GNDやGNDループ問題に目くらましされている現状がある。
古くから「フツフツ」と存在していましたが、だんだんとXLRコネクタの1番と金属シェルとの切り離しが推奨され、マイク回線のEMC環境は原理原則から遠のいていったことに筆者は危険性を感じていました。
17年前、2006年突然こんな発表があり、「何を考えているんだ」とビックリした経緯があります。
この文書の通り作ったケーブルを多点中継して100m、200mと延長敷設した場合何が起こるか、「吊り回線」で200m以上はザラなだけに考えただけでも「ゾッ」とします。
もしホール施工時にこの通り処理し多点中継された超ロングケーブルが壁内配線されていたら特に高周波域のEMCイニュニティは極端に低下して問題を起こすことは火を見るよりも明らかです。
(起こる問題は50/60HZのハム音とは限らず、そのほか一定又は間欠的ランダムなノイズ音となり、マイク音声を見事に汚してくれます)
それは平衡度アップやコモンモード対策はあまり役には立たないノーマルモード(ノルマルモード)ノイズだからです。
ホールのマイク回線のこの問題は現状の否定が鍵、アナログレベルで必ず解決できると信じています。おそらく本質となる対策ネタは「常識」の範疇にはないでしょう。
EMC評価法
各イミュニティ測定などメーカーではシミュレーターや各種機器による数値化・評価が可能ですが、測定サイト(専用敷地)、電波暗室や測定ベンチ、など自作者個人で負えるものではありません、そこは代替手段で評価するのが適切と考えます。
2020年 IEC61000-4-39が制定され、より新しい電磁環境に沿った試験法が国際的に定められました。
それによれば9kHZ~6GHZに至る超広帯域について帯域を分割したそれぞれの試験方法が定められており、それに対する耐力(イミュニティ)評価となっていますが、それ自身いまだに試行錯誤をひきずっているように感じます。
個人レベルでは「測定」は困難としてもマイクロホンEMCの実質的な聴音評価は可能と考えています。
むしろノイズ発生側の実質的な広帯域簡易シミュレーション法を考え出したいと思います。
対象ノイズ源、周波数など
1.商用電源周波数50または60HZ、すなわち「誘導ハム耐力」
2.SCR調光ノイズ(2~8kHZの高調波は数MHZ以上に及ぶ)
3.中波放送送信所周辺での放送波の回り込み・検波障害(~1.6MHZ)
4.エレベータのインバータノイズ(10KHZ~450KHZ と広帯域であり電界強度100dBμと中波放送波並の対応が必要)
4.携帯電話(端末からは待機時にも間欠発信されている)700MHZ以上及びWifi、bluetooth周波数(リハでは発生せず客入り状態の本番で発生しやすいのが特徴)
◎ハム防止対策が万全でも他のプロセスからの影響には無力であり、現在の新しい「外乱」条件に対応することこそEMCの基本といえる。
対策
ノイズ対策(EMC)には押さえどころがあります
1つは「筐体構造」、もう1つは「回路上」の対策ですが、接続ケーブルの問題はもっとも大切ながら見落とされがちな点です。
ただしどれも同じプロセスに向き合いますが筐体構造の低インピーダンス化を徹底的に追及することが最優先、回路上対策では音質の劣化を招かずに効果を上げる方法をとる。
敷設されたケーブルのEMCはさらに独自のプロセスが考えられます。
肝心なのはそのすべての相乗作用でEMC耐力(イミュニティ)のUPをはかることに尽きます。
ノイズ対策の誤解について
金属で覆えば万全か:ノー
上記 その1・2では機器のシャーシーなど最大サイズの金属部とアルミホイルとの間はハイインピーダンス導体、すなわちコンデンサとして容量結合し、何もないときよりも外乱に対して不利となる。
アルミホイルはシャーシーと接続してアルミホイル~シャーシー間は同電位の疑似グランドを形成しインピーダンスを持たせないこと。
プラスチック筐体ではベースとなる金属シャーシーなどグランドプレーンとなる基準金属を置く。
金属部が複数に分かれる場合ばすべての金属を「高周波インピーダンス」の低い接地法で基準金属(GP)に接地し同電位(大地間0V)を保つ。
現状
上記の考え方はマイクロホンでも同一、その一例を図解します
筐体廻りEMCのポイント
・見えない回路を頭の中で見る(分布定数回路での判断に尽きる)
・インピーダンスは高周波領域で見る
(筐体構造)
1.実回路+等価回路(分布定数回路)であらゆる動作を考える
見えない回路(分布定数による等価回路)を見ることこそがEMCのカギです
2.金属筐体は一つのファラデーシールドで完結させ「0電位」導体で覆うことに意味を持つ
3.筐体上、分散金属によるハイインピーダンス部分を作らない
4.分散金属は高周波的に共通化させ接地(仮想接地)させる
5.塗装は絶縁物、金属同士接触部は剥がす 「菊座金」は接合部インピーダンス低下の良ツール。
6.ネジロック禁止(金属部を分散させる不適材料です)
7.プラスチックなど非金属筐体では機器を構成する最大金属部を「仮想金属筐体」として考え、グランド・プレーン(仮想接地部)とする
(接地=アースに対する考え方)
1.「実接地」の害を回避した「仮想接地」こそがEMC上の接地です
2.1種接地、2種接地といった「実アース」に「ノイズ防止=排除」能力を求めるべからず、「接地したら良くなった」は矛盾のるつぼとなる
3.多点接地と1点接地は原理原則で使い分け「多点接地」を無条件で悪者にしない
(筆者EMCプロフィール)
筆者は4ビット~8ビットの時代、某専業メーカーに居ました。機械式から置き換わりつつあった電子キャッシュレジスター(ECR)、通信機能の加わったPOSシステム黎明期、そこで次々発生する「誤動作」にイニシャルリセットで間に合っているうちはまだいいが仲間の技術者たちと「修理」の次元を超えるような異常ともいえる基板交換、IC交換に明け暮れるも再発を繰り返し、徐々にメーカーとして信頼を失いつつありました。しかし同業他社も似たりよったりであることがわかり「今やっていることはなにかが間違っている」という認識に立ちました。そして電源ノイズ、静電気放電ノイズにより論理反転・ラッチアップなどによる障害が起こっていることを突き止めました。
デジタルいけいけ時代、「アースすれば良い」「ノイズフィルター」だ、「ソフト対策が一番いい」「シールドすれば・・・」という周囲の安易な意見はいったん全部振り切りました。ノイズ対策といっても実践で役に立つ参考書など皆無でした。
会社は「金のことは考えなくていい」という約束で筆者に丸投げして来ました。当時まだほとんど知られていない「EMC」の概念を調べながら複数のシミュレーター装置を配備して評価を始めた。そして製品レベルはボロボロであることがわかってくると会社存亡の危機の中での昼夜、全社の協力体制でハードウェアと筐体構造、基板上の電源系低インピーダンス化、通信I/Fを中心に対策を実施していき、ノイズトラブルはしだいにおさまっていきました。そのようにして製品と会社が危機からよみがえった過去の経験を持ちます。
先行事例はすぐ広まり、家電大手数社にも出向き、「バンデグラフ法」などのQA・QC基準・手法の誤りを指摘、改善させていった黎明期の「EMC屋」ということになり、現在でもノートPCなどにその思想が受け継がれており、これを「EMC設計」と呼ばれるようになりました。
EMC技術は無線技術そのもの、40年前の経験ではありますが本質は普遍的ですので現代的に焼き直しが必要ではありますがホールのマイク回線のこの問題は現状の否定が鍵、アナログレベルで必ず解決できると信じています。おそらく本質となる対策ネタは「常識」の範疇にはないでしょう。
#2に続く
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